教える,学ぶ ということ― ピアノ発表会―

 我が家の子ども達がピアノを習い始めたのは、10年前である。当時娘が通っていた保育園で、ピアノを習い始めた友達が増え、私は毎日のように「ピアノ習いたい」と言われ続けていた。そのうち、言わなくなるだろうと思っていたら、諦めもせず言い続けるので、根負けして習わせることにしたのである。

 ピアノを習わせたいと願う親は多いとは思うが、私の場合、「子どもの習い事(塾を含む)の送迎は時間的に無理」であり、時間の都合付けてまで我が子の習い事を優先するという発想もなかった。

 そうしたら、出張レッスンに来てくれるいい先生がいると聞き、渡りに舟・・とお願いすることにした。
 消音つきの値の張るピアノを買い、いよいよレッスン初日。

 ところが、あれほど楽しみにしていた次女(当時5才)は、レッスン10分ほどして「辞めた!!」と言い放ったのである。「毎日習いたい!って言ってたのは何!」と一瞬思ったが、そもそも「習いたくない」という気持ちで続ける方が間違っているので、「いいよ〜」とにこやかに返答したら、傍で見ていった長男(当時 小4)が「じゃあ、僕が習う」と言ってきた。

 ということで、長男、長女2人のレッスンが3年ほど続いたある日、「そろそろ習おうかな〜」と言うので、3人のレッスンとなった。
 次女は、毎回毎回、兄・姉の習う姿を見て、何かしら思うところがあったのもしれない。3年経って次女自身の口から「習いたい」という言葉を聞き、「習いなさい」と親から無理強いをさせなかったのは、本当によかったと思った。
 3人のレッスンなので、合計1時間半。必ず、音楽に関するゲーム等があり、端から見ていても、仲良く楽しく羨ましい程の様子であった。

 こうして、兄弟3人で10年もの間出張レッスンが続いたのは、ひとえに、先生の優しい人柄と、上手な教え方である。
 
 この先生の子ども達への言葉掛けからは、本当に学ぶ所が多かった。
 例えば、レッスン前の練習をほとんどしていない場合「練習やらないと、上手にならないよ」「今度は、ちゃんとやってきてね」などの声掛けがない。嫌みの一言が全くない。それどころか、「できない時もあるよね。今度はここをこうやるといいよ〜」って言ってくれるのである。「気だての良さ」って本当に大切だと思ったし、こういう先生を「天性の教師」って言うんだろうなとも思った。
 そして、当然たくさん練習して上手にできた時には、絶賛してくれる。「本当に上手になったねえ」ってね。

 素敵な先生に出会えたことに感謝し、長女にとっては最後かもしれない発表会を今日、聞きに行く。

 ショパン軍隊ポロネーズ
 連弾は、モーツァルト「アイネ・クライネ ナハトムジーク」