追悼 石井桃子氏

 2日に石井桃子氏が亡くなりました。

 私が、最初に石井桃子さんという名前を知ったのは、児童書を読み出したら、あまりの面白さに止まらなくなり、児童文学に関する書籍には一通り目を通した20歳の頃です。
 
 「かつら文庫」の活動記録集『子どもの図書館』を繰り返し読み、そこに挙げられている児童書をすべて読み、子どもの時に、優れた児童書に出会うことの幸せは、なにものにも代えられないものだと、深く心に刻みました。

 そして、その時に、小学校1年の時に「この面白さは、何だろう!!」と何十回読んだ『ふしぎなたいこ』の作者が石井さんだと知り、6才で石井さんの文章に触れた幸せを思いました。

 石井さんは、多くの翻訳をされていますが、私が一番衝撃だったのは
『ノンちゃん雲に乗る』です。最初、読んだ時に、抜群に訳が上手い、上質な翻訳文学だと思っていたら、作者が石井さんでした。しかも、1947年作ですから、私が読んだのは、30年も経ってからです。全く古びない文章があることと、読んだ人を幸せにする文章が確かに存在することに対して敬意を表したいと思いました。
 
 最後に石井さんの文章を読んだのは、96歳の時に訳されたという
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です。幾つになっても、旺盛な活動が本当に嬉しかったです。

 私が、こうしてブログを続けているのも、元を手繰ると種を蒔いてくれたのは、6歳の時に出会った石井さんの文章です。心より感謝したいと思います。

 ご冥福をお祈りいたします。

 毎日新聞ニュースより 

1907年埼玉県生まれ。日本女子大英文科卒。菊池寛と知り合い、文芸春秋社に入社(33年退社)。A・A・ミルンの原書に出合い、40年「熊のプーさん」を刊行。47年、創作の「ノンちゃん雲に乗る」を出し、ベストセラーになった。

 翻訳はほかにマーク・トウェインの「トム・ソーヤーの冒険」、J・M・バリーの「ピーター・パンとウェンディ」、ディック・ブルーナの「ちいさなうさこちゃん」、ビアトリクス・ポターの「ピーターラビットのおはなし」など。

 編集者として戦前は新潮社の「日本少国民文庫」を担当、戦後は「岩波少年文庫」「岩波の子どもの本」に携わった。

 また、自宅を子どもたちのために開放して「かつら文庫」を開設。その活動の記録「子どもの図書館」は児童文庫の普及に大きな影響を与えた。東京子ども図書館も設立した。93年、日本芸術院賞を受賞。

 94年に自伝的小説「幻の朱い実」を著し、03年には96歳でミルンの自伝「今からでは遅すぎる」の翻訳を出すなど、旺盛に文学活動を続けていた。